Doctors Voice vol.4
ジッツマーク検査の保険収載を働きかけたい
通過遅延型便秘の治療
通過遅延型便秘に500例以上の
ジッツマーク検査を実施
患者さんの納得感が高く、
持続可能な治療に繋げており、
保険収載を働きかけたい
藤田胃腸科病院
理事長/院長
本郷 仁志 先生
― アイアールエックス・メディシンのサービスを利用して、
未承認治療薬/海外医薬品を使用し治療することに至った背景を教えてください。
当院の患者さんに行う便秘の検査に海外の医療機器を使う場面があり、その輸入をきっかけにサービスを利用し始めました。
便秘には大きく分けて2つのタイプ、①通過遅延型と②排便困難型があります。通過遅延型便秘は診療ガイドライン上、ジッツマーク※1により大腸通過時間が測定できると記されています。便秘の重症度を測るうえで、医療者の感覚に頼らない客観的な指標として活用できます。
ジッツマークは2024年11月現在、日本で医療機器として保険収載されておらず、同様の医療機器も存在しません。現時点では海外からの輸入に頼らざるを得ない状況です。患者さんの費用負担が大きいので、私個人はこれを保険収載すべきと考えており、講演などの活動で治療に活用した成果を発表しています。
※1 ジッツマーク(SITZMARKS)®
大腸の働きを調べる検査に使う医療機器。ゼラチン製のカプセルにリングが入っており、内服したカプセルの停留位置をレントゲン撮影で確認することで、大腸の働きを調べる。
― 治療中に直面した課題や困難はございますか。
またその克服内容についてお聞かせください。
やはり患者さんに高額な自費をご負担いただくことが課題だと感じています。当院ではこの検査の自己負担金額は2万円です。繰り返しになりますが、現在通過時間遅延型検査は保険外であり、将来的に保険収載すべきだと思います。また配便困難型便秘に対する治療法が不足しており、便秘の分類の仕方にも疑問を抱いている面があります。
保険収載に当たっては、学会で論文を発表するなどの活動が必要ですが、民間病院の理事長として経営や診療と両立するハードルが高いと感じます。コストの面でも採算が合わず、当院でも私個人の使命感や医学的探究心で行っているのが実態です。
研究や教育をリードする大学病院でも、こういったバイオフィードバック療法※2などの特殊な技術を提供するには、医師や検査技師、看護師など多職種連携が必要になります。大学病院はスタッフの異動が多いため、せっかくこの分野であるスタッフが知見を深めても、他へ移ってしまったら、また一からやり直しになります。
こういった事情で、ジッツマーク検査の保険収載や検査法の浸透に関する展望が見えておらず、普及には時間がかかるだろうと思っています。
※2 バイオフィードバック療法
自律神経系の制御を受ける生理指標を機械により測定し、視覚や聴覚を介して知覚しやすいかたちに変換して患者にフィードバックすることにより、自己制御できるよう訓練していく治療法のこと。最終的には機械の助けを借りることなく、生体反応を望ましい方向に自己制御できるようになることを目的とする。
― この治療を行って成功したこと、ポジティブな結果はございますか。
この医療機器を使った検査は、患者さんにとって目に見える診療であり、納得感が得られやすいと感じています。便秘に限らず、治療の出発点は患者さんの自己把握です。病院が単に薬を出すだけではなく、患者さんがなぜそれが必要なのかを理解し納得して頂くことで、持続可能な治療に繋げています。
具体的には、ガストログラフィン※3という造影剤を使った治療法を行うことで、薬の効果が視覚的に確認できます。治療中に患者さんが自分でジッツマークを飲み、次の日に腸内でどのように残っているかを観察します。腸内の通過時間の遅れや便秘の治療には、ポリエチレングリコール(PEG)という薬が効果的で、その動きを確認するために造影剤が利用されます。私は便秘治療には、ポリエチレングリコールが効果的であり、これが難治性便秘の基本薬になるべきだと考えています。
※3 ガストログラフィン®
経口からの適応を持つ唯一のヨード系造影剤。バリウム製剤が投与できない、急性出血や消化管の穿孔またはその疑いのある患者さんにも使用が可能。
― 弊社サービスをご利用いただいたご感想をお聞かせください
御社には迅速に対応して頂いているので、助かっております。
一方で、患者さんの負担が高額になり過ぎていることは大きなハードルだと考えます。
― 未承認治療薬/海外医薬品による治療を検討している患者や医師へのアドバイスをお願いします。
私は患者さんの治療にとって有用と考えられることは、安全性等が担保されていれば、医師として良いと考え行ってきました。ジッツマークもこれまで500個以上使用し、トラブルは一切なく、安全性が高いと考えています。既に海外で承認を得た製品であり、日本人の体に合わないという事例も少ないと思います。
お話のまとめ
■お話を伺った方
藤田胃腸科病院
理事長/院長
本郷 仁志 先生
■施設情報
医療法人祥佑会 藤田胃腸科病院
https://www.fujita.or.jp/
大阪府高槻市松原町17番36号
阪急高槻市駅より約0.7km
JR高槻駅より約1.3km
■専門分野
胃大腸がん(発見動機・診断・検診)、炎症性腸疾患、機能性胃腸症、ヘリコバクタ・ピロリ、上下部内視鏡治療、生活習慣病指導
■ご経歴
平成元年 大阪医科大学卒、 同年 京都府立医大第1内科入局
平成15年 藤田胃腸科病院 院長
平成21年 同病院 理事長(院長兼任)
平成31年 大阪医科大学付属病院 臨床教育教授 着任
■認定・専門医
日本消化器内視鏡学会 指導医、日本内科学会 認定医
日本消化器病学会 専門医、日本消化管学会 認定医
日本消化器がん検診学会 認定医
■著書
著書:胃腸づくり50の心得胃腸づくり50の心得
悩める現代人へ、専門医が贈る正しい胃腸の知識と守り方
2019年7月 幻冬舎出版