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Doctors Voice vol.5

Doctors Voice vol.5

既存の治療で制御困難な犬の慢性咳嗽がいそうから、
飼い主と動物のQOLを救いたい

青木 卓磨 先生

One Medicineの視点から切り拓く

獣医療における新たな可能性

麻布大学 獣医学部
准教授
青木 卓磨 先生

― アイアールエックス・メディシンのサービスを利用して、
未承認治療薬/海外医薬品を使用し治療することに至った背景を教えてください。

既存薬では制御できない「夜間の咳」

当研究室には、心臓外科や循環器・呼吸器疾患を抱える多くの患者さんが全国から紹介されてきます。中でも深刻なのが、小型犬に多い僧帽弁疾患や気管虚脱、気管支軟化症に伴う慢性的な咳です。

既存の鎮咳薬やステロイド、気管支拡張薬などを多剤併用しても咳が止まらないケースは少なくありません。特に夜間の激しい咳は、ワンちゃん自身が眠れず体力を消耗するだけでなく、飼い主様も付き添いで睡眠不足に陥り、精神的に追い詰められて「ノイローゼ様状態」になってしまうこともあります。

海外の専門書では、ジフェノキシレート+アトロピン(Lomotil)が気管虚脱に伴う咳に対して使用されており、一定の臨床的有効性が示唆されていることを踏まえ、導入を検討するに至りました。こうした「藁にもすがる思い」で来院される飼い主様に対し、治療の新たな選択肢を提示したいと考えたのが、海外医薬品を導入したきっかけです。

インタビューの様子

― 治療中に直面した課題や困難はございますか。
またその克服内容についてお聞かせください。

インフォームドコンセントと「待機時間」の短縮

海外医薬品を使用する上で最大の課題は、飼い主様へのインフォームドコンセントです。国内での使用経験が少ない薬剤については、有効性だけでなく副作用のリスク、そしてコスト面についても丁寧な説明が不可欠です。文献上、ジフェノキシレートはオピオイド性鎮咳作用を有し、アトロピンは気道分泌を低下させることで咳を軽減する可能性が示唆されています。一方で、対照試験などの高いエビデンスは乏しく、経験的使用が中心である点も認識しております。そのため、適応症例を限定し、インフォームドコンセントを十分に行った上で慎重に導入いたしました。

また、輸入に伴う薬剤到着までの「待機時間」も大きな課題でした。容体が刻々と変化する中で、薬剤の到着を待つ間に状態が悪化してしまうリスクがあるからです。今回、アイアールエックス・メディシンのサービスを利用したことで、予想以上にスピーディーに薬剤を導入できたことは、臨床現場として非常に助かりました。

― この治療を行って成功したこと、ポジティブな結果はございますか。

動物と飼い主、双方の生活が劇的に改善

既存の鎮咳薬(ブトルファノール、マロピタント、リフヌア等)で十分な効果が得られなかった症例において、咳の減少、気道分泌物の減少、夜間の咳の改善を認めた症例を経験いたしました。本薬剤は犬において咳や下痢に対してオフラベルで使用されることがあり、投与後比較的速やかに臨床症状が改善することが示唆されています。

実際に既存薬で効果が得られなかった重症例に導入したところ、嘘のように咳が止まった症例がありました。咳が治まることでワンちゃんが快適に過ごせるようになり、体重が増えるといった好循環が生まれました。

何より、飼い主様から「久しぶりに夜、安心して眠ることができた」というお声をいただいたことが印象的です。獣医療において、動物の治療は飼い主様のQOL改善と直結しています。海外医薬品という「武器」が増えたことで、これまで救えなかった層に手を差し伸べられるようになった意義は大きいと感じています。

ワンちゃんと患者さま

― 弊社サービスをご利用いただいたご感想をお聞かせください

海外医薬品の調達サービスについては、臨床の現場において非常に助かっていると感じています。特に、個々の医療機関では入手が難しい薬剤を、迅速かつ比較的簡便な手続きで確保できる点は大きなメリットであり、重症例への対応力向上につながっています。

一方で、海外医薬品を使用する際には飼い主への説明が非常に重要になりますが、現状ではそのための資料が十分に整備されていないのが課題です。治療内容や輸入の流れを分かりやすく伝えられるツールがあると、よりスムーズにご理解いただけるのではないかと感じています。

― 未承認治療薬/海外医薬品による治療を検討している患者や医師へのアドバイスをお願いします。

本薬剤の使用は国内では一般的ではないため、既存治療で不十分な症例に限定すること、また副作用(鎮静、便秘など)を十分に理解することが前提となります。
国内で使用可能な治療薬による標準治療を優先した上で、どうしてもコントロールができない症例に対する追加選択肢として慎重に導入すべきであると考えております。

一方で、当院の症例においては非常に有効であったことも事実であり、今後の治療における選択肢の一つになり得る可能性を実感しています。

今後の展望:「One Medicine」の視点で獣医療の可能性を広げる

私は現在、本学で開発した「咳モデル」を介して咳の研究を進めています。人薬の開発データには、創薬段階で動物での安全性試験が行われているものも多く、その知見を獣医療に還元する「One Medicine(一つの医学)」の考え方は非常に重要です。医療技術も同様であり、本学では医師とタッグを組んで医獣連携チームを結成し(Team AzOH)、獣医療を医療と同等の高い水準へ引き上げるための取り組みも行っています。

今後も、エビデンスに基づいた慎重な判断を前提としつつ、海外の有益な情報を積極的に取り入れ、日本の動物たちに還元していきたいと考えています。そのためにも、アイアールエックス・メディシンのような、信頼できる調達ルートと法的なサポート体制を持つパートナーの存在は、我々臨床医にとって心強い支えになると期待しています。

青木 卓磨 先生

お話のまとめ

チェック
小型犬の慢性咳嗽がいそうは既存薬では制御困難な症例も多く、動物だけでなく飼い主の生活にも深刻な影響を及ぼす。こうした背景から、既存治療の限界と次なる選択肢の必要性を感じ、海外医薬品を新たな治療の切り札として導入した。
チェック
海外医薬品の使用には、エビデンスの限界やコスト、輸入に伴う待機時間などの課題がある。臨床現場では、適応症例の選定と十分なインフォームドコンセントを徹底し、慎重に運用している。
チェック
導入症例では咳の改善やQOL向上といった顕著な効果が確認されている。今後はOne Medicineの視点のもと、人医療との連携を通じて、獣医療のさらなる発展が期待される。
麻布大学動物医療センター

■お話を伺った方
麻布大学 獣医学部
准教授 青木 卓磨 先生

■施設情報
麻布大学動物医療センター
https://avth.azabu-u.ac.jp/

神奈川県相模原市中央区淵野辺1-17-71
JR矢部駅より徒歩10分

■専門分野
循環器科、呼吸器科。特に犬の心疾患や慢性咳嗽がいそうの研究・治療に尽力。高度な外科手術から低侵襲な内科治療まで幅広く手がけ、動物と飼い主の双方に寄り添う医療を実践している。

■主な資格
日本獣医循環器学会 上席認定医
博士(獣医学)

■所属学会
日本獣医循環器学会
日本獣医学会
犬・猫の呼吸器臨床研究会
日本獣医輸血研究会

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